私たち東郷製作所は創業以来、あくなき探究心で技術力を磨いてきました。そのチャレンジ精神は、自動車用小物ばね製品のトップメーカーとなった今も変わらず、常に新たな技術の開発に取り組んでいます。その源にあるものとは…。
技術系3部門のトップが“東郷の技術力”について語ります。
―現在の主力商品
原田:自動車やガス器具の配管などで使用する「ホースクランプ」です。金属板を円環状にした部品で、ゴムホースを締め付けることでパイプとの密着を高め、液体などが漏れるのを防ぎます。シェアは、国内で約70%。海外でも約30%あります。
1972年に世界で初めて東郷製作所が開発。特許も取得し、量産化にも成功しました。強度が強く、耐久性にも優れ、機能性も高い、信頼のある商品として、取引先である自動車メーカーから高い評価を受けています。
近藤:「『昨日よりもよい品』で社会に奉仕する」が社是。単に「よいものをつくって終わり」ではなく、素材を見直して軽量化を図るなど、常に改善に取り組んでいることも、高い信頼を得ている理由のひとつです。
自動車組立ラインの作業者が作業しやすいようにホースクランプにホルダーをつけたり、そのホルダーもワンタッチで取り付けができるようなものにしたりと、常に先手先手でお客様によりよい商品を提案しています。
池田:企業目的の中に、「良い商品を国の内外に永続かつ大量に供給して恒久的に社会に貢献する」という表現があります。技術部門がせっかく良い商品を開発しても、量産化できなくては意味がありません。当時から、成形機を自社開発で製作するなど、技術部門と協力しながら量産化技術を蓄積していることも当社の強みです。
原田:ホースクランプ以外にも、自動車のエンジンやトランスミッションに使う圧縮ばねや組立品(バルブスプリングやダンパースプリング、リターンスプリング)も主力商品のひとつです。このほか、トレランスリングはトルク制御のためクラッチなどに用いる部品。数年前から開発に着手し、量産化に成功。主力商品のひとつに育てています。またホースクランプ(鋼板)の代替製品であるクイックコネクタ(樹脂)もバリエーションを揃え、お客様の用途に応じた対応ができるようにしています。
―ものづくりの原点
原田:もともとは、鍬(クワ)などの農機具をつくっていました。より強度と耐久性のある鍬をつくるため、熱処理や塑性加工といった技術を身につけてきました。これが当社の強みの原点であり、現在のばねづくりにも、もちろん活かされています。諸先輩がよりよいものをつくる工夫をしてきたことが、私たちのものづくりに脈々と受け継がれています。
池田:オーステンパーという熱処理法は、日本の先駆けとして当社が導入したものです。板ばね製品の熱処理品質向上のため、例え量産化実績の無い技術でも自社開発して導入するという強い思いがありました。試行錯誤を重ね、加工技術、熱処理技術など、さまざまなノウハウを蓄積してきた歴史こそが私たちの財産です。
―技術の活用法
原田:工夫といえば、材料についても同様のことがいえます。塑性加工や熱処理技術などの強みを活かして鋼線から鋼板へ、そして樹脂材や銅材へと、時代に合わせて扱う素材は増えていっています。
池田:近年では、板材や樹脂材などの固有技術、要素技術を組み合わせて電子関連部品の開発にも発展を見せています。線ばねをつくる際のフォーミングという加工技術や熱処理の技術を、板ばねの製造にも活かすなど、すべてがシナジーとなって途切れることなく続いています。
―新分野への取り組み
近藤:創業からチャレンジ精神が旺盛で、その精神はいまも受け継がれています。新しい商品へチャレンジする度に、会社も成長し続けます。開発室では、20年以上前から主力である自動車用ばね以外の分野の開発を進めています。特に力を入れているのが、社会福祉や介護の分野。1998年に販売を開始した、ボタン操作ひとつで背中の上げ下げができる起き上がり補助装置の「おきらく」がその代表です。また、2015年には癒し型赤ちゃんロボット「スマイビ」の販売を開始。ボディには、自動車用ばねづくりで培った樹脂成形の技術を活かしています。
現在はまだ開発の段階ですが、義手などの補装具の開発にも取り組んでいます。
原田:2030年、2050年には自動車の動力はガソリンから電気や水素など新しいものの比率が高まっていきます。そうなると当社の製品構成も大きく変わっているはず。その時に会社が勝ち残るため、将来的な製品構成を今から考えていく必要があります。会社が、技術部門が、もう一段、上のステージに上がるため、新たな価値の創造に取り組んでいます。
―ものづくりのこだわり
原田:技術部のスローガンは「考動」。考動の考が“明るく楽しく”、動が“スピードと実行”。いいアイデアが思い浮かんだら、スピード感を持って即実行に移すことが大切。いいアイデアを出すためにも、「仕事を大いに楽しもう」と部員に呼び掛けています。そしてお客様から“困った時の東郷頼み”と言って戴く、こちらからは“お客様が驚くような提案”ができるような技術力、対応力を常に磨き上げていきたいですね。
池田:生産技術部のスローガンは「1/2化」「ばねを極める」スピード、精度、コストへの挑戦を愚直に取り組んでいます。
近藤:開発室が取り組んでいるのは、新しい顧客の創造。自動車部品メーカーへ転身してから直接消費者へ商品をお届けする機会がなくなりましたが、再び直接消費者の声を聴く商品を作るというのが経営者の夢でありました。社会の大きな流れを見ながら、どんな製品や商品が世の中の役に立つものになるかを考え、お客様の本当に欲しいものをつくり上げていきたいと考えています。